「雇用」は重い契約である

 ヒトを雇うということに関して、安易に考えている企業がしばしば見受けられます。なかには、労働条件の明示もなく、雇用契約書等の文書の交付も行わずに「雇用」している企業もあります。

 ヒトを雇うということは、労働に関する契約の合意です。それは正社員やパート社員、アルバイト等の雇用区分にかかわらず、重い意思決定であると認識すべきでしょう。

 実際に労働者を「雇用」した場合には、労働基準法をはじめとした労働関係諸法令の適用を受けることになります。これらの法令等は、企業に対して弱い立場に陥りやすい労働者の保護を目的としています。別の言い方をすれば、企業が都合の良いように労働者を使用しないために企業に対して一定の制約を課しているということです。

 労働関係諸法令のなかには、違反した企業に対して重い罰則規定を定めているものもあります。罰金等の行政処分のほか、悪質な場合には刑事処分の対象にもなり得ます。また、近年のSNS等の普及によって、企業が労務管理を疎かにしているといったような悪い情報は一瞬で拡散され得る環境となっています。労働者を大切にしていないという、いわゆるブラックなイメージがついてしまうと、今後の採用や事業経営にも大きなリスクとなってしまいます。企業の規模にかかわらず、企業の労務管理を適性に行っていくことは、もはや最重要課題のひとつといって良いでしょう。

 「雇用」するということは、企業にとって大きなリスクを含んでいる重大な契約事項です。様々なリスクを検討し、そのうえで「雇用」するという意思決定を行う際には、諸々のリスクに対応した労務管理を行っていくことが大切です。

 安易な「雇用」を行ったことで想定外の問題が起こってしまわないように、「雇用」に対して適切な認識をもち、真摯な態度で臨む企業が求められます。

 

 

2020年07月01日