労働基準法は企業側と労働者側の信頼を築くためにある
労働基準法は、雇用される側の立場であり、使用者に比べて弱者となりがちな労働者を保護する目的で整備された労働者保護の法律です。労働者を守るという目的から、使用者側に様々な義務規定を定めています。その多くは罰則を設けており、いわゆる取締法といわれるように強力な効力を有します。
一般的に、企業が行う労務管理における根拠の多くは労働基準法に定められています。例えば、従業員を雇用した際に行わなければならない労働条件の明示義務、従業員に支払う賃金に関すること、一定数以上の従業員を雇用した際に作成しなければならない就業規則に関することなど。これらはすべて労働基準法に規定されている内容です。
なかには、うちの会社は労働基準法など知らなくてもちゃんと利益をだして経営しているから問題ない、といったような態度の企業もみられます。労務に対する意識が希薄な企業です。このような企業は、率直にいって「労務リスク」が非常に高い危険な企業であると思います。
労働基準法などを知らなくても順調に経営してきたというのは、今日までたまたま運が良かったからと思うべきでしょう。昨今では、資格や大学などで労務に関する専門的な勉強をしていない人でも、インターネットで簡単に労働基準法などの知識を得ることができます。例えば、使用者側に残業代に関する知識がなく未払いとなっている割増賃金がある場合、労働者が然るべき請求手続きをすれば企業は100%支払うことになります。あるいは、労働基準監督署など行政機関の調査を受けた場合には、是正の対象として指導勧告を受けることになるでしょう。
そして、なにより重要なことは「労務リスク」が高い企業というのは、従業員を大切に考えていない企業ということです。
従業員を大切にしている企業は、労働者を守る法律である労働基準法をはじめとした法律を率先して学び、企業の労務管理に活かしています。従業員を大切にするという企業の姿勢が従業員に伝われば、従業員のモチベーションや満足度も向上します。「労務リスク」をどれだけ下げるか、どのように下げていくか、ということが労務管理における最も重要な目的のひとつであると思います。
労働基準法は企業を苦しめるための法律ではなく、企業と従業員の信頼を構築する基本的な法律であるという認識をもつことが必要なのかもしれません。