安易な「雇用」はしない方がよい

  後藤経理労務事務所ホームページの「代表挨拶」や「料金案内」のページを読んでいただくと、私が「雇用=人を雇うこと」に対してネガティブだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな事は決してありません。むしろ、会社が成長していく過程において、「雇用」は重要な要素であると思っています。そして、だからこそ、「雇用」に対して、雇う側である雇用者は大きな責任を負う事を実感すべきであるし、重大な経営判断を要するものと認識すべきだと思っています。

 人を雇う「雇用者」には、2つの責任が生じると考えています。2つの責任とは、「契約上の責任」と「契約外の責任」です。

 「契約上の責任」とは、雇用契約で締結した労働条件等を遵守すること、またそれらを規定する就業規則や根本である労働基準法等の法令を遵守するということです。そもそも法令や契約の内容を遵守することは当たり前に求められるものではありますが、未払い賃金や有給休暇拒否等、労働問題はまだまだ無くなる気配がありません。労働環境をめぐる世間の評価も年々厳しさを増すなかで、当たり前に求められるものを当たり前に行っていくことは、経営管理上の最優先事項のひとつといってよいと思います。「雇用者」側の方たちはもちろんのこと、雇われる側である「被雇用者」側の方たちも自ら学び、一緒になって変えていく、整えていくという環境づくりが大切です。

 そして、「契約上の責任」以上に重要だと思うのが「契約外の責任」です。「契約外の責任」とは、雇用契約や就業規則、労働関連法令等では定められていないけれども、「被雇用者」に対し、「雇用者」として負うべきであろう責任のことです。「契約外の責任」が具体的に何を指すのかは、各人によって意見が異なるところだと思いますし、唯一の正解があるものでもないと思います。ただ、私の見解としては、「「被雇用者」がビジネスパーソンとして一人前になる」までを見届ける、という覚悟を持つ責任が求められるのではないかと考えています。

 終身雇用制度は多くの企業で過去のものとなり、2回3回の転職は珍しくない時代となりました。人を雇う「雇用者」側の意見として、せっかく雇用したのに辞められてはたまらないという意見も多く耳にします。もっともな意見だと思います。しかし、「雇用」するということは、そのようなリスクを受け入れるということでもあります。自社の従業員の成長を願ってたくさんの時間や労力を投じても報われないかもしれないというリスクを背負いながら、それでも従業員の成長に誠心誠意向き合い続ける覚悟を持つことは「雇用者」としての責任のひとつであると思います。

 覚悟のない「雇用」は、「雇用者」にとっても「被雇用者」にとっても不幸な結果になるリスクが高くなります。だからこそ、安易な「雇用」はすべきではないですし、「契約上の責任」と「契約外の責任」の2つの責任をしっかりと自覚して、覚悟した人が「雇用者」となるべきだと考えています。

2020年07月01日